プロメテウスPROMETHEUS ── 二重らせんのシアワセ


TV CMで「リドリー・スコット」という固有名詞を聞いた時点で観ることを決定w
それ以外の前知識がほとんどない状態で劇場へ。


作品の内容に触れること自体がある意味でネタバレになってしまうので、必要のない方は読まないようお願いしたい。


ストーリーは、女性考古学者であるエリザベス・ショウの古代遺跡探索に始まる。複数の古代遺跡から「スターマップ」の存在が浮き彫りになり、スターマップにより特定された天体に人類の起源の謎を解くカギが存在するという確信のもと、ショウを始めとする有能な科学者を中心としたプロジェクトチームが宇宙へと旅立つ ──「ウェイランド社」の出資によって。


このウェイランド社、「エイリアン」(1979)では”the Corporation”とのみ明示されていたが、セット上では”Weyland-Yutani”のロゴが登場している。

パンフレットに掲載されているインタビューでリドリー・スコットが、話のうえで「プロメテウス」後に、ウェイランド社とユタニ社が合併することになっていると発言している。


ところで「プロメテウス」は、「エイリアンVSプレデター」(2004年)のストーリーをある意味で反復するような流れになっていて、後者でも女性考古学者が主人公で、地球上の古代遺跡内部に確認された謎の熱源に向けて科学者たちとともに探索を開始する。そしてその探索プロジェクトもウェイランド社が組織する。


いずれにせよ、この作品はストーリー的には「エイリアン前史」の位置付けにあるのだろう。

というか、作品をひととおり観ればわかるが、はっきり言えば「プロメテウス」は、人類の起源とエイリアンの起源が「二重らせん」を成す話なのだった。


その「二重らせん」の意味は、作品で明示されるDNA的な意味でもそうなのだが、自分なりに少し視点をずらして整理してみよう。


「エイリアン」シリーズ(一部「プレデター」と重複)を観るにつけ、実は、コングロマリット(企業集塊)化した人間組織の存在描写が隠れた主題としてあるのではないかと思ってしまう。


利潤の極大化を目指す企業が、あらゆる対象を呑み込み、増殖していく。

対象が、おぞましい戦闘生物であっても関係なく、呑み込んだものによって自らも変容。

その過程で周囲の世界も変容していき、相互作用が進行する。

ゴールがどこにあるのか、どこに連れて行かれるのか誰にもわからない。


── 「エイリアン」とは、そんな資本と環境の相互作用の恐怖、企業集塊としての人間のもつ闇そのものでは? と思えてしまうのである。


いずれにしても、「太陽系儀」を始めとする描写の美しさ、H.R.ギーガーの造形がとても大切に・丁寧にスクリーンに描きこまれていること、「コツン」とガラス部分が当たる「宇宙服」感触の描写など、どれをとっても単なるSFホラーのワクを超えた壮大な映像世界と明言できよう。


結果、とてもシアワセな気分で劇場をあとにすることができた(この映画で「シアワセ」という表現もどうかという気がするが、、、)。


p.s.それにしても、今回のウェイランド社のロボット「デイヴィッド」は好演だった。

しかし、なぜこの名前? "Low" by David Bowieのアルバムジャケットがずっと頭の中にチラついている。